はじめまして、走る翻訳者です。
現在は、英日日本語字幕翻訳の仕事をしながら、ホテル・旅館支援の会社の仕事をしています。
宿泊・旅館業に携わってからは20年以上になります。
ホテルとの出会いは宴会場のホールスタッフ。それから、温泉旅館チェーン、カナダのB&B、外資系シティホテルと何かと宿泊・旅館業に携わり続けています。
その中で「多言語でインフォメーション」の着想を得ることになる出来事がありました。
略歴
学生時代:ホテルの宴会場スタッフバイトをして料理に興味を持つ
始まりは学生バイトで始めた宴会場スタッフです。宴会場の設営・給仕・片づけをするお仕事です。
週に3~5日働き、毎週土日は結婚披露宴があるので終日働きます。
体力仕事ですし、宴会や婚礼は時間が決まっているので時間に追われる仕事です。大変でしたが、バイト仲間や先輩と仲良くなりましたし、熱血気質が性に合っていたようで、どっぷりとホテルに浸かってしまいました。
学生にとっては初めて見る数々の宴会料理にも心を奪われました。
当時は今と違って大皿盛りが主体だったので、テーブルに運んでからお客様1人1人にメニュー名を伝えながらお皿に取り分けます。フォークとスプーンを挟んで使うサーバーの持ち方を覚え、和洋中、さまざまな料理を覚えました。
それがきっかけで短大英文科を卒業したあとに、調理師専門学校に行って料理の勉強をして調理師免許を取りました。残念ながら腰が悪いため調理師として働くことはなく、ペーパー免許となっています。
社会人時代 その1:温泉チェーンの予約センターでお品書きの英訳を頼まれる
当時、北海道でいくつもの大型温泉旅館を抱える温泉チェーンの予約センターで働きました。
2000年代前半です。今と違って海外からのお客様は少なかったですが、時々団体ツアーのお客様の予約がありました。
ある日、旅館から「夕食のお品書きを英語にしてほしい」と電話がありました。
地方都市の短大英文科卒業の英語力なんてたかが知れているのですが、英会話を習っていたこともあり、引き受けて一生懸命調べました。そういうことが何度かありました。
カナダ・プリンスエドワード島のB&Bバイトで海外のお客様の滞在方法に触れる
2000年代半ば、ワーキングホリデーでカナダへ行き、B&Bで掃除とベッドメイキングの仕事をしました。
日本人が多い施設でしたが、美しいプリンスエドワード島の自然を堪能しに世界中からお客様が訪れていました。海外のお客様が連泊滞在しているお部屋の掃除に入ると、日本人と過ごし方の違いに驚きます。
海外のお客様は自分の部屋を旅行先に持ち込む方が多かったです。
服はチェストにすべてしまい、いつも部屋に飾ってある写真立てをホテルの客室に並べていました。
日本のツアーは1泊ごとに移動し、ホテルも変わることが多いです。
ですが、海外の方は1箇所を拠点にして、そこから日帰り旅行へ出かけます。アメリカや南米から車で自転車を持ってきて、サイクリングを楽しむ方もいました。
こういう日本と海外のお客様の滞在方法の違いに触れられたのは面白かったです。
カナダでもう1つ面白かったのは、公用語が英語とフランス語の両方だったことです。
そのため、標識、消費者向け商品、パンフレット、ちょっとした冊子、町のイベントのチラシ、すべて英語とフランス語の両方が同じ分量で書かれています。
例えば、冊子の場合、右から読むとフランス語で、左から読むと英語(左右適当です)。
ドレッシング、パン、チョコなどのパッケージは、片面が英語、別の片面がフランス語。
ポスターは上半分が英語、下半分がフランス語など。
道路標識も英仏併記です。
カナダの首相は英語とフランス語で全く同じスピーチをします。2か国語話せないと首相に選ばれないと聞きました。
大事なのは、英語もフランス語も同じ分量で同じ文字サイズでだということです。
まったく同じ案内を2か国語でしています。
※一般的な話です。特にケベック州はフランス語でしか書かれていないものが多いです。
日本のチラシって、日本語→英語→日本語→英語と交互になっているものが多いですし、英語は小さくなっています。ウェブサイトは外国語ページの分量が日本語に比べて明らかに少ないものが多いです。
公用語ではないのでカナダと比較はできません。
ですが、英語しか読めない人からすると交互に書かれるより英語の部分はまとめて書かれたほうが読みやすいです。情報量の違いは言葉が違っても分かります。案内方法を考える余地はあると思います。
社会人時代 その2:外資系ホテルで宿泊予約係勤務し、英語にもまれる
2000年代後半~2010年代半ばまで、外資系チェーン傘下の元純日本系ホテルで働いていました。
ワーホリ帰りだったのでフロント希望でしたが、TOIECのスコアに目をつけられて事務スタッフに回されます。
当時、外資系チェーンの傘下になったばかりで英語の読み書きができるスタッフが少なかったのです。
お客様向け、社内向け、英語が必要なことは何でも頼まれました。
お客様向け
海外のお客様からの電話対応、英語で書かれた問い合わせメール対応(宿泊、レストランに関することが多かった)、夕食メニューの英訳など
面白いところでは避難訓練の英語アナウンスもしました。
社内向け
本部のえらい外国人に見せる文書の英訳(上司の仕事)、本部との電話会議での通訳、監査担当が外国人担当だった時の通訳、出張報告やら予算資料やら本部に提出するものは何でも英訳(上司の仕事)、外資系チェーンの本部から送られてくる社内メールの和訳
私は翻訳・通訳業務で雇われたわけではなかったので、すべてボランティアです。自分の仕事は別にありました。あまりの仕事量に泣けてくることもありましたが、ぺーぺーの事務員にはできない経験ができました。本音を言えばちょっとくらい手当てが欲しかったですが、私の血肉になりました。
社会人時代 その3:ホテル、旅館支援スタッフとして契約施設から英訳を依頼される
2010年代後半~現在。ホテルを辞めたあと、ホテル・旅館をサポートする側の会社に従事しています。
私がホテル業に足を踏み入れた頃からは一変してインバウンドが増えました。説明、案内が伝わらないことによるトラブルを避けるため、いろいろな案内文の英訳を契約施設様から依頼されます。
バス車内の案内、ウェブサイトに乗せる案内、水回りのちょっとしたご案内、シャトルバスのご案内、お品書き、海外の方向けの宿泊プラン…
お願いごと、問い合わせが多いこと、集客のためのこと、実にさまざまな内容の依頼があります。
現場の生の声が聞けるというのは実に勉強になります。と同時に本質を英語で表現するのは難しいなといつも思います。
心がけているのは「日本語を翻訳」するのではなく、「英語話者と同じ表現」「近い表現」を使うということです。日本語の翻訳が目的ではなく、相手に伝えるのが目的なので、伝わる表現を目指しています。
『多言語でインフォメーション』の構想
正直言って海外のお客様に十分な案内ができていない施設が多いと感じます。
2005年にカナダにいた頃に「Engrish.com」というサイトを教えてもらいました。
スペルミスではありません。世の中の英語のミスを揶揄したサイトなので、サイト名でそれが表現されているのです。
20年近く経ちますが、いまだに日本国内の変な看板が数多く投稿されています。
原因は英語が分からない人が、正確かどうかを確認できない、もしくは確認しないまま機械翻訳が生み出す英語を使っていることです。
海外のお客様に伝わるように一生懸命に英語の案内文を用意していることは伝わっているでしょう。
でも肝心の「何が言いたいの?」が伝わらないと意味がありません。
日本では翻訳・通訳に極力お金をかけないようにする文化があるように感じます。
五輪でさえ通訳・翻訳ボランティアが募集されています。各スポーツのW杯でさえボランティアが翻訳、通訳していることもあります。
お金をかけたくないから、無料の機械翻訳を使ってそのまま看板にしてしまうのでしょう。
それならば、私がサイトを立ち上げて、さまざまな案内文を多言語で無料で紹介したいと考えました。
ぜひこのサイトを活用して、海外のお客様に伝わるご案内をしていただければうれしいです。
またその助けになれば幸いです。
サイト運営者のお仕事
現在は英日字幕翻訳者として海外の映像に日本語字幕をつける仕事もしています。
英語以外の言語の映像でも英語スクリプトがあれば日本語字幕制作に対応しています。
最近、英語の映像であれば(専門的な映像は除き)、文字起こしから対応し始めました。
英語のほか、フランス語、ドイツ語、ラテン語、トルコ語を鋭意勉強中です。
準備ができたら英語以外の案内文も紹介していきたい予定です。
英語の勉強、翻訳の勉強、翻訳の仕事で役に立った書籍を少しずつ「わたしのROOM」に集めて紹介しています。参考になる書籍があるかもしれません。
TOEIC935点、英検準1級、フランス語検定3級です。